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<第1話:ウナギ>
森にデブは、一人暮らしている。
森の側には川が流れ、板状の根を大きく張ったパンヤの木と巨大な岩が、
デブの住む小屋を守るようにそびえている。
パンヤの木と岩の間は、ちょっとした広場になっていて、
いつも心地よい風が流れていた。
デブは森の果物を採り、川ではウナギを捕って気ままに暮らしている。
ウナギは、食べれば脂がのっていて美味しく、
その脂は料理や明かりにも使えた。
皮はなめして、靴や袋などいろいろな物に加工できた。
結構な大きさがあるので、一度捕ればしばらく食料には困らなかったが、
なぜかビリビリして痛いので、捕まえるのには一苦労だった。
体に絡みつかれると、ビリビリで気絶してしまうこともあった。
ある日、デブは森で、芯が腐ってなくなっている木を拾ったので、
ウナギの皮を張ってコンガを作ってみた。
叩いてみると、ポコポコと心躍る音がした。
新しい遊びを発見したデブは上機嫌だった。
三日に一度、川に仕掛けたウナギの罠を確認しに行くのが、デブの仕事だ。
葦を編んだカゴにエサを入れて、川に沈めておくだけの簡単な罠だ。
この日は一匹もかかっていなかった。
空っぽの罠をまた川に沈め直して、特にすることもないので
川辺に座ってコンガを叩きながらボンヤリしていたところ、
漁師が舟で釣りをしていた。
漁師は釣り針と糸だけを使って、巧みに大物を釣り上げている。
どうやら魚が針にかかった瞬間に糸をはじいて振動させ、
魚を気絶させているようだ。
釣り上げられた魚は、一様にグッタリしている。
次から次に魚を釣り上げる様子は実に見事だった。
デブは感嘆のうめきを漏らしながらつぶやいた。
「うぅー、すごいー。俺もあんなに上手に取れるんだったら、こんな苦労してないのになぁ」
しかし、ウナギを釣り上げた漁師は不機嫌そうにウナギを針から外し、
川に逃がしそうとした。
「ああっ、もったいない! 何してんの、漁師さーん! ウナギー!」
「ああーん?」
「ウーナーギー、逃がさないでー!」
「何?」
「ウナギーくーだーさーい!」
「はあ?」怪訝そうに漁師は岸に舟を寄せ、デブにウナギを差し出した。
「アリガトゴザイマース!」
「スポーン!」とデブは嬉しさのあまりコンガを鳴らした。
「あのさ、こんなウナギもらってどうするの?」
「え? どうするのって、食べるよ」
「おまえ、これ食うの? 脂が多すぎて食えたもんじゃないでしょ」
「え? ペロリだよ。俺、毎日食べるよ」
「うぇー、主食かよ。だからおまえ、デブなんだよ」
「子供の頃はあんまりウナギ食わなかったけど、その頃から太ってたよ!」
「ふーん。最近メタボリックとかが流行ってるらしいから気を付けたほうがいいよ。じゃあな。」
漁師が去っていくのをデブはしばらく見送っていた。
「リョウシさん、メタル何とかでウナギ食べれないんだな。病気かな? かわいそうに………。まあ、運良くウナギも手に入ったし、今日もパーっとやるか! よいしょっ!」と担いだ瞬間、気絶していたウナギが目を覚まし、交代にデブが気絶した。
*ウナギのビリビリに手を焼くデブ。さてどうする! どうなる?
次回、乞うご期待!
今回の登場人物
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