<第2話:電気屋>
次の日、デブはウナギのビリビリをなんとかしようと思い立ち、
「ビリビリのことなら電気屋だろう」と、
意を決して街の電気屋に行ってみることにした。
何度も道に迷い、ほうほうの体で街に到着したデブは、
まず、街で一番大きな電気屋に行ってみた。
しかしそこにはLGやらSUMSUNGなどと書かれた
銀色に輝くアメリカ製品ばかりがならんでいたので、
デブは気後れし、早々にその場を離れた。
そして裏路地の《ドニーエレクトロ商会》という古びた看板を掲げた、
怪しい電気屋へ吸い込まれるように入っていった。
看板に書かれていた「電気のことなら何でも相談ください」
という文句に誘われたようだ。
中に入ったデブは、再び店内の雰囲気に圧倒され、息をのんだ。
怪しく光る電球が並んだ、変な箱。
白黒の歯がびっしり並び、その上に電線が絡みついたオバケみたいな機械。
小さなポッチがたくさんついた、使いにくそうな机。
天井からはたくさんの電線がぶら下がっていて、
銀色の足がついた小さな虫みたいな部品が、棚の中にみっちり詰まっている。
デブには使い道のわからない不思議な機械が所狭しとひしめき合い、
奇妙な光景を作り出していた。
しかし乱雑に積み重ねられているように見える機械たちも、
よく見ると、ある種の調和を持って並べられていて、
その様子はデブのすむ森にもなんとなく似ていたので、少しだけ安心した。
「電気屋っていってもいろいろあるんだね」と、デブは思った。
店の奥で常連客と店の主人らしき人物が、スニッカーズを頬張りながら、
デブには全く理解できない会話をしている。
二人ともメガネをかけていて、ぴったりとした赤いTシャツに
そのモチモチとした体型を包んでいる。
「結局ディスクリートだとかどうこう言ったって、ボトルネックになっている電源を改善しないことには、なにをやってもムダなのかもねぇ」
「そうだねー、やっぱり発電所の近くが一番安定するからねぇ」
「でもまあ、今手に入る物で最大限のポテンシャルを引き出すところに面白さがあるんだけどね」
「今日買ってもらった真空管はウチのオリジナルでね、ニッポンの工場で作らせてるから、期待は裏切らないと思うよ。イッヒヒ」
「うん、早速帰って付け替えてみるよ。ウッシシ。じゃ、また」
「ありがとうございましたー」
常連客が帰ったところで、デブはおそるおそる話しかけてみる。
「あのー、ですね、ウナギがビリビリするんですけれど、なんとかしたいんです。」
「何? ウナギ? ビリビリ?」
「あのー、ですね、ウナギがビリビリするんですよ。それをなんとかしたいんですね。シンクーカンとかデンゲンとかでなんとか……」
デブはさっき立ち聞きした言葉を、意味がわからないまま巧みに交えてみた。
「ああ、デンキウナギね。何? 電気取りたいの? おもしろそうじゃん」
「そう、電気を取れば少しは楽になるかな?と思って」
「へぇー、あんた、なかなか面白い事考えるじゃん! OK、もう客も来ないだろうし、そろそろ店閉めるとこだから見に行くよ。お宅どこ?」
「あっちの森なんだけど」
「森?」
「森に住んでます」
「ちょっと遠いね。じゃ、バイク出すから一緒に乗って道教えて。えーっと、デンキウナギは頭側がプラスで、シッポ側がマイナスだから、これとこれと……」
ブツブツと呟きながら、ドニーさんは店のガラクタの中からいくつか機材やら道具を引っ張り出した。
「じゃ、行こうか。あんたはサイドカーに乗ってね」
店の前に停めてあったサイドカーつきのバイクで、二人は森へ出発する。
「あ、そういや自己紹介まだだったね。俺、ドニー。ドニーエレクトロ商会の四代目」
「俺デブ。森に住んでます。何代目かは知らないんだけど。ドニーさんって電気のことなら何でもわかるんだね。すごいね」
「まあね。初代のじいちゃんが日本人でね、天才技術者って言われてたんだけど、いろいろあってこっちに移民してきてさ。その研究資料が代々受け継がれてるわけ」
「へぇー、日本ってすごいんだね」
「あっちの大きい電気屋、行ったことある? あっちの店員は、電気屋のくせに何もわかってない残念な人たちばっかりだからね。そのくせボッタクリ値つけてるから、行くとガッカリするよ」
「だよね! 俺も今日行ったんだけど、そんな気がしたから、嫌になってすぐ店出たんだよ。そんでドニーさんとこに来たんだよね」
「あんた、なかなかいいセンスしてるじゃん。まあウチの店に来るのは、たいてい面白い人たちだけどさ」
「ところでサイドカーって、すごく速いね」
「初めて乗ったの? 実はこれも俺が作ったんだよね」
「ほんと電気のことならなんでもわかるんだね!」
「まあね。イッヒヒ」
ノリノリの二人は、周辺の温度をモワモワと1〜2度上昇させながら
バイクを飛ばしていたが、ふとドニーさんは聞いた。
「ところで、次どっち曲がるの?」
「え? 右だったかな? えーっと、左でいい?」
「なんで俺に聞くの? どうやってウチまで来たわけ?」
「迷いながら」
「勘弁してよ!」
「たぶん右だと思うよ」
「さっき左って言ったじゃん!」
*怪しげな電気屋と知り合ったデブ。さてどうする! どうなる?
次回、乞うご期待!
今回の登場人物
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